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子供の領分、大人の領分 r.p.m.g


「おい変態」
「なんだガキ」
「見てみろよ、あれ」
 助手席でノートパソコンを広げデータをいじっていたメローネは、そこでようやく顔を上げた。横の運転席でハンドルにもたれかかっているギアッチョの指し示す方向を見る。
 反対車線を挟んで向こうの通りには、見慣れた男が二人と、彼らの前に、女がひとり。
「いい体してるな。とくに二の腕のあたりの肉づきがベネ」
「どっちの女だと思うよ」
「プロシュートの好みとは思えないし、リゾットかな。どっちにしろああゆうのがタイプだったら意外だけど」
「オッサンはわりと幼女趣味が多いって聞くぜ。俺はプロシュートの野郎でもおかしくないと思うね。あいつらそんな変わんねぇだろ」
「なにが?」
「年。リゾットとプロシュートの」
「さぁ、知らないけど。年齢で女の好み決めつけるとしたら、おまえは胸も尻も出まくってるアメリカン・ガールがお好みか?ギアッチョ」
「ケッ、俺はコレクションモデルみてぇなスラッとしたのが好みだぜ」
 女は、リゾットとプロシュートの方を見ていて、こっちからは後ろ姿しかわからないが、おそらく若いだろう。ヨーロッパ人にしては背が低いが、後ろから見てもグラマラスな体つきをしている。
 ギアッチョとメローネが車中でいい加減な会話を交わしてるうちに、プロシュートがこっちに気付いた。リゾットに二、三言話して、女が引き止めようとするのを無視し、さっさと車道を渡ってきてしまう。道路交通法を軽々と破った横断っぷりに、行き交う車たちからクラクションの雨嵐だ。
「チッ、あの馬鹿」
 いつも目立つ行動はすんなとか注意してきやがるくせによォ…。ギアッチョが毒づいてるうちに、悠々と車道を渡ってきたプロシュートが後部座席に乗り込んでくる。
「チャオ」
「オイ、どっちの女だよありゃあ」
「あ?あーリゾットだ」
「マジかよ!」
「俺の勝ち。ギアッチョ、金だしな」
「オイオイオイ俺ァ金賭けるなんていってねーぞ」
「おめー俺に賭けてたのかよギアッチョ。見る目がねぇ、やっぱガキだな」
「黙ってろテメーがしゃべると無駄なエネルギー浪費すんだよクソがッ!」
 なにか蹴りたかったのだろうが運転席の足元には蹴れるものもなく、ギアッチョは仕方なしにハンドルに拳を思いきり叩きつけた。けたたましいクラクションが鳴る。
「おい。やかましいぞ。なにしてる」
 遅れて後部座席に乗り込んできたリゾットが、幾分不機嫌そうな声を放つ。見回しても周りに女の姿はない。
「なんだよリーダー、フラれたのか?せっかくあの二の腕を間近で味わいたかったのに」
「アンタがああゆうの趣味とは、意外だけどある意味納得だぜ。体のでっかい男とチビの女が腕からませて歩いてるの、よく見るもんなぁ」
「プロシュート」
「俺はなにも言ってねえ」
 知らん顔で煙草をふかすプロシュートに、ウソつけてめーがリゾットの女だっつったんだろォーがァー、往生際悪ぃぜプロ兄ィ〜、と運転席および助手席から文句が飛んでくる。
「うるせーなガキども、ほらとっとと発進しろ。リゾットの熱烈なカノジョが追っかけてきちまうだろーが」
「イッテェ!テメーその足癖の悪さどうにかしろッ!」
 プロシュートが遠慮なく後部座席からシートを蹴りつけたものだから、運転席のギアッチョはお返しとばかりに思いきりアクセルを踏み込んで急発進した。
 つんのめってシートに頭でもぶつけろと思ったのだろうが、そこは足のお行儀に定評のあるプロシュート、上げた足で運転席のシートを踏みつけ、前のめりに倒れるのを阻止。それを知ってまた苛々三割増しのギアッチョが盛大なクラクションを鳴らし、その後ろでプロシュートは鼻を鳴らしている。
 付き合いの長いリゾットや要領のいいメローネは、もはやそんなことでプロシュートにつっかかったりしないが、ギアッチョは性格上どうしても無視できないから、この二人の攻防は永遠に終わることはないんだろう。プロシュートに至っては完全にギアッチョで遊んでいる。たまに反撃にあってるが。
「熱烈なカノジョってどうゆうことだよリーダァ〜。俺らには紹介してくれないのかよ?」
「黙って前みてろ。まちがってもおまえには紹介しねえ」
「ヒュウ!カノジョってのは否定しないのか」
 シートから顔をのぞかせて嬉しそうに茶化してくるメローネに、リゾットはうんざりした顔で答え、となりのプロシュートを見る。おまえがなんとかしろという目線だったが、そんなものプロシュートが意に介するはずもなく、
「やめとけメローネ、あれはマジの相手なんだからよ。こいつの性格わかんだろ、大切な愛は、そっと守ってゆっくり育んでいこうってタイプだ。やわらなか羽毛でひなを守る親鳥みてえにな。大切な彼女を、ギャングなんて下世話な連中に突き合わすはずねーよ」
「オイ待てテメーはどうなんだテメーは?彼女と会わせてもらってんじゃねーか。人一倍下世話なくせによぉ」
「ギアッチョおめー口の聞き方には気をつけな?ハンカチもってるか?貸してやろう。今からおめーはいっぱい鼻血を噴くからな」
「車中で暴れるなよ」
「つーかギアッチョが鼻血噴くほど殴られたら運転どうすんだよ、俺二輪専門だぜ」
「ダセェ。これぐらい運転できるようにしとけ。女をデートに連れてけねぇぜ」
「やだね四輪なんて、みっつ以上足があるものは嫌いなんだ」
 スピードにのる車は都心を抜け、旧市街地へ入る。大きく視界が開け、鮮やかなスカイブルーとエメラルドグリーンにきらめく海面が踊りでてきた。南イタリアらしい白壁の通りが続く。
「あ〜〜ちくしょう、こんないい天気の日に野郎ばっかでドライブとはよォ〜〜俺の愛車も泣いてるぜぇクソッ」
「まったくだよ。リゾットが彼女連れてきてくれたら、楽しいドライブになっただろうにさ」
「一応言っておくが個人的に親密な付き合いをしている女とあんな街中で会うと思うか」
「そーだぜギアッチョ、そんなこともわかんないなんてやっぱガキだな」
「テメーも真に受けてたんじゃねーかよッ!?」
「うるせーぞガキども。次に叫んだら二人まとめて車から放り出す」
「つーか元凶はテメーだろうがオッサン!!」
「死にてぇらしいなグレイトフルデッドッ!!!」
「死ぬのはテメーだホワイトアルバムッ!!!」
「ふたりともメタリカ」
「ちょっとオイ俺も射程距離な…ブハァッ!!」

あとがき

プロシュートに走るという行為は似合わない
かわりに常に早歩きなイメージ
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