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やさしさなど知らずに f.p.g.m


「おい、アレ。どーにかならねぇのか」
 最初に音を上げたのはやはりというかホルマジオだった。ダイニングテーブルにつくプロシュートはめくっていたファッション雑誌からちらと目を上げる。
「どーにかって、どう?」
「黙らせるか大人しくさせるかっつぅーことだよ」
「ふたりまとめて要介護なジジイにでもしてみるか?」
「ま、それもいいがな……」
 さすがに死ぬんじゃあねーの、とホルマジオは肩越しにリビングの方を振り向く。6人掛けの長いソファには巻き毛の男、一人掛けのソファには長い直毛の男が座っている。
 座っているだけならいいが、このチームに参入してまだ日の浅い2人は、互いに不穏な空気をまき散らしまくっている。公害もいいとこだ。
「おい…足どけろよ」
「はァ~!?おめー頭だけじゃなく目も悪ィーのかァ~?ギプスつけてんだろーが、曲げれねぇーんだよ足上げとくしかねぇだろーが」
「ならベッドでおとなしく寝てろよ。目障りだ」
「目障りならオメーがどっか行け俺のが先にココに座ってたんだからなッ!」
「自力じゃ歩けもしねぇくせに動きまわるなアホメガネ」
「歩けなくてもテメーを凍らしてブチ割るぐらいワケねぇーんだぜクソマスク野郎がァーッ!!」
 勢い余って立ち上がりかけたギアッチョは、ギプスで固められた片足をローテーブルに載せている自身を失念していたらしい。結果、半分腰を浮かしただけで、片足の複雑骨折の痛みにうなってソファに逆戻る。
 仕事中の怪我とはいえ、『ホワイトアルバム』の無敵の装甲を過信して突っ走ったのだから自業自得だ。弾丸は止められても衝撃は消せない。車に跳ね飛ばされれば、当然骨も折れる。
 一方、ギアッチョに冷ややかな目線を投げつけるメローネは、見せつけるように悠々と足を組み直す。だがその両腕は包帯でぐるぐる巻きだ。皮膚には賽の目状の傷が縦横無尽に走る。まるでオセロの碁盤をえがいたかのように。
「…だいたいよォ、自分のスタンドに攻撃されるってのはどうゆうことだぁ~?テメーの精神が未熟だから、そうゆうことが起こるんじゃあねーのかよ」
「『ベイビィフェイス』の息子は自律型だ……おまえに俺のスタンドは理解できないだろうけどね」
「テメーが一番テメー自身のことをわかってねえんじゃねーのかよ!」
 ガンッ!!
 メローネがローテーブルを思いっきり蹴りつけたと同時、ギアッチョの手がメローネのむき出しの肩をつかんだ。一瞬にして空気とともに肩が凍りつく。ギアッチョを睨みつけるメローネは、テーブルにのせていたパソコン型スタンド『ベイビィフェイス』に手をのばした。傷だらけの両手でも扱うつもりだ。
 だが次の瞬間、メローネに掴みかかっていたギアッチョは見る間に小人のように小さくなった。知らぬうちに背後に立っていたのは『リトルフィート』だ。
「おめーら白熱しすぎだっつぅーの。ったく、しょおがねぇなぁぁ~~~……」
「なんで俺だけなんだよッ!この変態バカマスク野郎もだろーがッ!」
「スタンドを先に使ったほうが悪い。ここでのルールだ」
 手のひら大になったギアッチョがソファの上でギャンギャン騒ぐのを、プロシュートが一刀両断する。ようやく読んでた雑誌を放ったということは、一応ホルマジオに加勢するつもりはあるらしい。
 ホルマジオはやれやれと肩をすくめ、小さいギアッチョをつまみ上げた。
「ちょっと頭冷やせよォ~~仲良くしろとはいわねぇけど、面倒は起こすんじゃねえって」
 小さくなっても騒ぎ続けるギアッチョをつまんだまま、ホルマジオは上のフロアへ移動する。上がっていく途中でちらっとプロシュートに視線を寄越した。こっちは引き受けるから、あっちをどうにかしろ、と言いたいらしい。

 ギアッチョの声が聞こえなくなってから、プロシュートは立ち上がって、さっきまでギアッチョがいたソファに腰を落とした。横に目をやると、『ホワイトアルバム』をくらったメローネの肩はもう元に戻っている。
 無言のまま煙草ケースから一本引き抜き、火をつける。深々と吸い込む。紫煙を、天井に向かって吹きあげる。
「一本ちょうだい」
 メローネが、包帯に巻かれた手を差し出してくる。ふしぎと、さっきまでのトゲのある様子はもう微塵もない。
 プロシュートに対してはいつもこんな感じだ。だからプロシュートにとってのメローネの印象は、愛想が良くてつかみ所のない奴、となっている。第一印象からそうだった。
 煙草ケースを放ると、メローネは痛むだろう両手でキャッチして一本抜き、ケースの隙間にねじこませていた安物のライターで火をつけた。一度吸い込んだ煙を吐いてから、grazie、とケースを返してくる。
 ギアッチョに対してもその素直さで応対すればいいものを。
 しかしまぁ、はたから見てもこの2人はそれぞれに厄介な性格をしている。1人でも面倒だから2人そろうとさらに面倒だ。
 なのになぜ今回のように、この2人で仕事を組ませるかというと、性格的にも能力的にも補い合えるタイプだからだ。短気で直情的だが理論的で徹底したギアッチョと、慎重で冷静だが感覚的で流れに身を任せるメローネ。直線的で直接的かつ単純に強力な『ホワイトアルバム』と、遠隔操作で自律し特異な能力を発揮する『ベイビィフェイス』。
 うまく組み合わされば隙のないコンビネーションになるはずだ。それなのに、ここまで性質が合わないとなると、話にならない。
 暗殺を生業とするこのチームでは、「チームワーク」は存在しないが時として「チームプレイ」は必要となる。仲良しこよしで頑張るものじゃないが、それぞれが能力に特化する分、補える部分は補い合えなければ、命などいくらあっても足りない。
 プロシュートはギャングとしてのけして短くない経験からそれを知っていた。メローネにしても、パッショーネに入ったのはここ最近らしいが、感覚として察しているはずだが。そこまで馬鹿じゃないはずだ。
「うまくいってねぇのか」
「見ての通りさ。やたらアイツの方から突っかかってくるし」
「そっちじゃねえ。ギアッチョとのことはオメーらで片付けろ。『ベイビィフェイス』の息子だ」
 メローネは「ああ…」と吐息のようにこぼしてから、背中をゆっくりソファに沈めた。
「『イイ育て方』が、まだつかめてないのかも。能力は高い。殺傷力も申し分ない。ただ、言うことをちゃんと聞かないことが多くて。俺を憎く思ってるみたいだ」
 煙草を指にはさみ、無意識に包帯の巻かれた腕をさする。
 プロシュートはそれを横目に、まだ長く残る煙草を灰皿に潰した。
「『イイ育て方』か……言うことを聞かねえってのは問題だな。『息子』の攻撃力の高さは、おめーが身をもって証明してるわけだし。でもそれをコントロールできねぇと仕事にならねえ」
 一番にどうにかすべき問題はそこだ。ギアッチョがメローネに苛立つのは、性格の不一致もあるが、スタンド能力のコントロール性にも起因している。
 直接身にまとって直接的な作用を起こす『ホワイトアルバム』の使い手であるギアッチョにとっては、『ベイビィフェイス』のように流動的で不確定要素の強いスタンド能力は、未知で不可解だ。完璧に自分のコントロール下におけない能力、というのに、恐怖に近い感覚を覚えている。たぶん。
「わかってるよ。『息子』は性質上、カンペキな制御はできないけど、きちんと育てれば俺の言うことを聞くようになるはずなんだ。それはわかってる。だけど、どう育てれば『イイ息子』になるのか、そこんとこがよくわからない」
 メローネは深く座り込んだまま片足を抱えて宙を見る。その表情はたよりなげだ。
 ギアッチョはメローネのことを、いつも余裕綽々でいけ好かねぇ野郎だと思ってるようだけど、実際にはこんな風に迷いや不安をにじませることもある。少なくともプロシュートは、メローネのこの顔を知っている。
 メローネがギアッチョに対してこうゆう姿を見せていないのだとしたら、見栄を張っているのかもしれない。ギアッチョに対してだけ。
 どっちにしろプロシュートから見れば、2人の反発はガキの張り合い、青くさいライバル意識からくる対抗心だ。
(ま、ライバルがいるってのはイイことかもしんねぇけどな。能力を伸ばし合うような関係になれれば)
 という考えだからプロシュートはこの2人に対してやや呑気な姿勢といえる。あまり切羽詰まってどうこうとは思わない。
 メローネは手と口の間で煙草を一往復させ、煙を吐いてから、プロシュートの方に身を乗り出してきた。
「なぁ、あんたはどう思う?どうやって育てたら『イイ息子』になるかな」
「さぁどうだろうな。俺らは教育者じゃねえし、結局は自分の親にしてもらったようにしかできねーんじゃねえか?」
「殴ったり蹴ったり無視したり?」

 プロシュートは、自分の親のことをふと思い浮かべた。この20年ぐらい思い出すこともなかった親だ。
 そもそも自分は『イイ息子』だっただろうか。かけらもそうは思わない。たぶんメローネもそうなんだろう。だから迷子みたいな目をプロシュートに向けてくる。彼が適切な『イイ教育者』になれる日はくるんだろうか。なれなければ、プロシュートたちの手でメローネを始末しなければならないのだけれど。

無題

毎回、楽しみに読んでいます。ほかの暗チ小説はカップル化していますが(それはそれでいいのですが)、これはノーマルでほのぼの且つ、暗殺チームの状況をリアルに書いているので、とても面白いです。著者さんの文才力、第三者視点などのアイデイアにもいつも驚いています。これからも陰ながら応援しています。

無題

うおお〜〜もったいないお言葉ありがとうございます〜〜!!すごくうれしいです!
なんかわりと特別な何かより生活のなかのちょっとしたワンシーンをえがくのが好きなので、なんかダラダラしたシーンの話が多い気が自分でしてますが、楽しんでいただけてるならこれ以上のことはないです
あたたかいお言葉ありがとうございます!活力いただきました〜!
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