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理屈は不要 r.m


 両手で握り込んだ銃身の重みを感じながら、パンッ!パンッ! 1発、2発。続けて3発目。イタリア製の拳銃ベレッタの9mmオートマチック。銃弾を撃つたびに銃上部のスライドが勢いよく後退する。その衝撃を腕に感じながら、メローネは続けて引き金を絞った。4発、5発、6発。
 弾倉を撃ち尽くし、防音用のイアーマフを外してから、手元のスイッチを押す。15m先にぶら下がっていた可動式の的が、機械音とともに目の前に近づいてくる。
「…………」
 メローネは半眼でその紙を眺めた。紙の的には黒い人影と、上半身の真ん中を中心に同心円が描かれている。
 銃弾は見事に、肩やら耳やらを撃ち抜き、絶妙に致命傷を外していた。いっそわざとかというほどに。
(まぁ……的に当たっただけ上々)
 プロシュートがいたら確実に馬鹿にされただろうが、今日は一緒に来ていない。ラッキーだ。
 しかしこの『パッショーネ』が管轄する、街中のバーの地下に作られた射撃場に入るには、メローネ一人では不可能である。表向きメローネは『パッショーネ』の人間と認められていないからだが、『パッショーネ』に属していなくても会員になれば、ゲストを連れて入ることができる。
 会員になるほどここに出入りしてるのは、プロシュートと、もうひとり。
「わざとか?」
「…なにが」
 メローネのとなりのボックスで同じく射撃訓練をしていたリゾットが、手元をのぞきこんでくる。指で、メローネが撃ち抜いた的の穴を指す。
「左半身ばかり命中している。こめかみの横、耳、頬、首の横、肩。こいつが右利きで右手に銃をもち、人質を左腕でホールドして人質のこめかみに銃口を当ててる場合、全弾人質の急所に直撃している。確実に人質は死んでるな」
「俺を過大評価してるのか?それとも遠回しに馬鹿にしてる?それか根っからのノー天気野郎?」
 リゾットは顔を引っ込めてとなりのブースで銃を構えなおした。リゾットが使うのはS&W357マグナム。リボルバー式の強烈な破壊力を誇る拳銃だ。シリンダに装填されたマグナム弾は6発。
 ドンッ!
 1発目。その反動の衝撃はベレッタの比じゃない。手首と肘に重い負担がかかる。それをリゾットは淡々と連射する。2発、3発。ターゲットの人型をぶち抜く黒い穴。4発、5発、6発。
 撃ち終わった拳銃を置いて、リゾットはイヤーマフを外す。となりから覗き込んだメローネは、目の前まで釣られて来た人型の的に、ほぼひとつの穴しか開いていないのを見る。
「すっごい」
 額ど真ん中に幾重にも重なって開いた穴。1発目がそこをブチ抜き、あとの5発すべてがその穴を通過したというわけだ。
 目を保護するためのプロテクターをポケットに突っ込み、リゾットは通路端の階段をあがりはじめる。
「もうやめんの、リゾット」
「ラウンジにいる。おまえはもうちょっと撃ってろ」
「りょ〜かぁ〜〜〜い」
 やる気のない間延びした返事を背に、リゾットは鉄階段をのぼりきってドアを開ける。
 射撃の受付兼バーのバックルームになっているラウンジには、男が2人。どちらもパッショーネの者だ。相手はリゾットがパッショーネだとは知らないが。
 壁に貼られたライブイベントやファッションショーの告知広告をなんとなく眺めながら、新しい煙草ケースのシールをくるくる剥がしていると、唐突にバーの裏通りにつながる扉が開いた、というよりは蹴り開けられた。かなり勢いよく。
 踏み込んできたのは目を血走らせた中年の男だ。酒が入ってるようだが顔は怒りに燃えている。
 蹴り開けられた扉のすぐそばに立っていたリゾットは、男と思いきり目があった。次の瞬間、男が震える右手に握っていた銃口をこめかみに突きつけられる。
「てめえパッショーネのモンか!!」
「……いや」
 そういうことになっているのでリゾットは極めて冷静に首を振った。他に部屋にいた店員の男2人も、椅子を蹴り立ち上がって乱入男に向け銃をかまえる。
「何してやがんだオメー銃を捨てろッ!」
「俺の女はパッショーネの連中に殺されたッ!むちゃくちゃに殴られて犯されてゴミみてぇに捨てられてなァ!オメーらの仕業なんだろうッ!ここがパッショーネの息のかかった店ってのは知ってるんだよ!全員、同じようにしてブッ殺してやるッ!!」
「…………」
 テンションの高いやりとりを続ける男と店員たちを横目に、銃口を突きつけられたままリゾットは、スタンドを使おうと意識を集中しかけていた。その時。
 気づいてしまった。さっきリゾットが上がってきた階段、地下の射撃場から続く扉。銃を突きつけ店員たちと叫び合う男からは死角になるそこで、片膝立ちのメローネが、拳銃をかまえている。
 銃口はこちらに向けられていた。つまり、リゾットに銃を突きつける男を狙って。
 瞬間、リゾットの脳裏に、さっきのメローネが撃った人型のターゲットが浮かぶ。
 ことごとく中心を外れ、でも『横に人質がいたのなら確実に人質を仕留めている』銃痕。
(撃つな、メローネ!)
 本来、乱入男に対して発動させるつもりだった『メタリカ』が思わずメローネに向くほどに、メローネの銃の腕前は致命的だった。
 けれどリゾットの祈りむなしくメローネはベレッタの引き金を引いた。
 バンッ!
 こっちに向けて飛来する銃弾を、リゾットは空中分解できないかと本気で考えた。できたところで散弾になって余計逃げられないのだが、すでにそんな判断能力はない。
「あがッ!?」
 しかしリゾットの予想に反して、銃弾はリゾットの真横の男の頬を貫いた。
 バンッ!バンッ!
 続けて発射された銃弾もすべてリゾットを外し、男の脳天、顔面を、ブチ抜く。
 男は衝撃のまま横倒しに崩れ落ちた。口と顔面から血を流し、絶命している。
 店員のギャングたちが駆け寄って来て、男の握っていた銃を取り上げ死んだかどうかを確かめているのを避けながら、リゾットはメローネの方を見やった。
「よく撃てたな」
「フン、見直した?」
 メローネは立ち上がって、片手に銃をぶらぶらさせながらニヤリと笑う。
「どうやって狙ったんだ?」
「簡単さ。リゾットを狙って撃った。そしたらそいつに当たった」
「…………」
 リゾットは思わず天を仰いだ。そこには薄汚れたバーの天井しかなかったが。
 メローネがスタンド使いで本当によかった。銃はもう握らせないでおくべきだ。
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