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安息のある場所 all


 メローネとイルーゾォという組み合わせがそもそも珍しいがそんな二人が喧嘩もせず大人しく留守番していたというのはもっと珍しい。ホルマジオがいたなら、空から槍でも降ってくるんじゃあねぇか〜?と言っただろうが、実際空から槍なみの珍事が起きた。
 ガッ… バンッ!
「ん?」
 アジトの玄関から不審な音がして、イルーゾォは淹れかけていた紅茶のティーカップをもったまま、ダイニングから鏡の中を通って玄関口の姿見に移動した。
「…なにやってんだ?」
 仕事着のリゾットはフラフラと壁やら靴箱やらに体をぶつけながら歩き、不意に体が傾むいたとおもったら、そのまま床に倒れ込んでゾンビのように這っている。
「ワーオ。ディモールトこわい」
 リビングでぐだぐだしていたメローネも、携帯電話片手に野次馬しにやって来た。電話の相手はギアッチョだったらしい。特徴的なやかましい声が通話口からもれている。
『オイなにしてんだオメー話してる最中にいきなり無視すんなッ』
「悪いギアッチョ、リゾットがゾンビになってて」
『はぁ?』
「おい大丈夫か?つーか、意識ある?」
 イルーゾォが姿見から体を出して、這っているリゾットの腕をつかむと、突如イルーゾォの手の甲からホッチキスの芯が飛び出した。
「うぎゃあッ!!」
 とっさに手を引っ込めたイルーゾォはそのまま反射的に鏡の中に逃げ込んでしまう。
「やばい、メタリカ自動発動状態だ」
 床に落ちた血だらけのホッチキスの芯を見やり、メローネは顔をひきつらせて後ずさった。リゾットは相変わらずうつむいたまま床をずるりずるりと這っている。
『おいッ、メローネ?なにがあった!?』
「まずいぜギアッチョ、なんてゆうかバイオハザードってゆうかダイハード的な……ギアッチョ?」
 おい?と呼びかけても返ってくるのはツーツーツーという無情な電子音。耳から離してディスプレイを見れば、通信不可の文字。
「メローネ、磁場が発生してるんだ」
「げっ」
 イルーゾォの忠告もすでに遅い、携帯はもはや使い物にならなくなっている。舌打ちひとつ、メローネは鏡面に逃げ込んだままのイルーゾォを睨みやった。
「とりあえずリゾット運ぶの手伝ってくれよ。こんなとこに転がしといたら邪魔でしょうがない」
「いやだ。どんな攻撃喰らうかわかったもんじゃねえ」
「『ベイビィフェイス』に分解させるか…?」
 ひどい言われようだがそんなことも一切微塵もおかまいなく、相変わらずリゾットは玄関から廊下にでかい図体を這わしている。気づいたが、ゾンビというよりでっかいゴキブリだ。



「なんだこりゃ?」
 なんだもくそもソレは至極見たままのソレであったので、プロシュートの呟きは疑問というより単純に抗議だ。ダイニングテーブルでのんきにコーヒーをすすっているホルマジオが、一応言葉を投げてくる。
「帰ってきてそっこー玄関でぶっ倒れたらしいぜ。張り込みの仕事で一週間ほぼ寝てなかったみてぇだから、放っておいてやれよォ〜?」
「俺だってこんなもんに関わりたくもねぇが邪魔でしかたねえ」
「そこまで運ぶので精一杯だったんだ。ほめてほしいぐらいだよ」
 ホルマジオの向かいで携帯をいじってるメローネが大仰に肩をすくめてみせるのを一瞥して、プロシュートはもう一度、自分の足もとに目をやった。リビングに据えられたソファを背にして、床に大きな黒いものが転がっている。寒いのか少し体を丸めているが、全体的に自業自得だ。
 犬みたいな格好でリゾットはつまり一心不乱に寝こけている。プロシュートをはじめ全員がとくに声をひそめるでもなく普通の音量でしゃべっているが、そしてプロシュートは今、リゾットの真横に気配を消すでもなく無駄に堂々と立ってるわけだが、まったく起きる気配はない。
 のぞきこめば眉間には苦悶のしわが寄っている。そりゃ寝心地よくはないだろう。ラグが敷いてあるとはいえ、単純に堅い床の上だ。
「リゾットのやつメタリカ発動状態で意識飛ばしやがって、おかげで携帯がイカレちまった」
「俺なんか手をホッチキスされたぜ…」
「軽いもんだろ。酔っぱらったリゾットに腹から有刺鉄線引きずりだされたことある」
「よく生きてたなァそれ。むしろオメーがすごい」
 わりあい神妙な顔でホルマジオに褒められたが、とくに嬉しくない。そんなことよりプロシュートはソファに座りたいのだった。一人用のソファは雑誌を広げるイルーゾォに占領されている。プロシュートはあきらめたようにため息を吐く。



 けたたましい音を響かせて玄関の開閉音がしたと思えば、そのままの勢いでギアッチョがリビングに突入してきた。
「メローネの野郎はどこだッ!?」
「どっか出かけたぜ」
 立ちっぱなしで林檎にかじりついているホルマジオが返すと、ギアッチョは盛大な舌打ちをひとつ、その背後からペッシが顔を出して変だな、と呟いた。
「メローネに新しいトラットリア連れてってもらう約束だったんだけど」
「電話途中でぶった切れたまま連絡もつかねえ。わざわざ車出したっつぅーのによォ〜〜〜」
「ああ、じゃあ携帯ショップにいってんのかもな?壊れちまったみてぇだから。まぁ待ってりゃそのうち帰ってくんじゃあねーの。バイク置きっぱなしだろ」
 ホルマジオの真っ当な意見にさからう理由もなかったので、ギアッチョは苛立たしげに鼻を鳴らしてリビングのソファへ向かった。腰をおろそうとソファを回り込んで、ギアッチョはふと足を止めた。ソファの背からおだんごを作った頭が見えていたのでプロシュートがいることはわかっていたが。
「なにしてんだオメーら」
 プロシュートはギアッチョを振り仰いで片眉をあげた。
「見たまんまだが?テレビみてる」
「そーじゃねぇだろオメーの足もとのそりゃなんだっつってんだ」
「リゾット」
「ああだろうなそうだろうよッ!じゃあなんでオメーはそのリゾットを足置きがわりにしてんだァ!?」
 プロシュートはソファに体を沈ませその長い足を前に放り出してるわけだが、なぜかその足の下に寝転ぶリゾットを敷いている。そもそもなぜそんなところでリゾットが寝ているのか、というか一見した感じではプロシュートが足蹴にして虐げてるようにしか見えないが。
「なんでって…」
 ギアッチョに吠えられ、プロシュートは軽く小首をかしげてみせる。
「そこにリゾットがいたから?」
「予想通りの返事すんじゃねえあとちょっとかわい子ぶるんじゃねえイラつくぜェーッ!!」
 こうしてギャアギャア騒ぐギアッチョとあくまで平然としたプロシュートのいつも通りのやかましいやりとりが始まるわけだが、それにしても足蹴にされているリゾットは相変わらず起きる様子もない。ホルマジオなんかは、こんな騒がしい中でよく寝れるなとその図太い神経っぷりに賞賛を与えたくなるが、リゾットにとって思いっきり寝こけれる、つまり気をゆるめられる場所がここなんだとしたら、それはそれで価値あることのように思えるのだ。
 まぁ、そんな風に悠長な考えに及ぶホルマジオにしても、この光景にとくに慌てもしないペッシも、寝てる人を足置きにするプロシュートもまったく遠慮なく叫び続けるギアッチョも、ついでにいえば人と約束していながらマイペースに出かけてるメローネもすでにすっかり興味をなくして自室にこもるイルーゾォも、そろいもそろって神経が図太い。もちろん一番極太なのはリゾットだ。
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