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王道変換バトン.6.9.10 mix


6:傷ついた天使(妖怪など人外の者でも可)を保護した人。人は?

 路地裏にうずくまるソレをジョルノは最初あやうくスルーしかけた。イタリアの一角、このネアポリスで、乞食まがいのガキなど掃いて捨てるほどいるからだ。
「……?」
 それでもジョルノが足を止めたのは、毛布をかぶったその塊が、路地裏をずるりずるりと這おうとしていたからだ。毛布にすっぽり包まれてしまう、体の大きさからみて子供にちがいないが、怪我でもしているのだろうか?
「おい…」
 路地裏をのぞきこんで、ジョルノは毛布の塊の様子をうかがった。声をかけても、こっちに振り向く気配もなければ、這う動きを止めるでもない。
「どうしたんだ、怪我してるのか…?」
 かがんで、毛布に手をかける。少し持ち上げると、子供らしい小さな手がのぞいた。
 指が、2本しかついてない。
「!」
 サッと毛布が引かれ、子供の体はすぐにまたすっぽり隠れてしまった。けれどジョルノはたしかに見た、中指と薬指と小指が本来あるはずの場所に『ついていない』。親指と人差し指しかなかった。
「こんなとこにいたのか、ベイビィ!」
 背後から響いた声に振り向く間もなく、ジョルノと毛布の塊の間に人影が割って入った。一瞬女かとおもう長い髪が揺れ、その毛布の塊をなんなく抱き上げる。
「いきなり逃げるから心配したぜ…どこも怪我してないか?」
 言葉のわりにその声には、労りややさしさが微塵も感じられない。ジョルノは警戒心を強め、その後ろ姿を見つめた。
 やがてくるりと振り向いた男は、顔に妙なマスクをつけていた。にっこり、ジョルノに笑いかけてみせる。
「悪かったな、『コレ』が何か迷惑かけたか?」
「いや……その子は、あなたの…?」
「『弟』だ」
 ジョルノは不意に直感した。この男は、自分と同じ種類の人間だ。心の奥底が冷えきっている、あるいは、空虚でからっぽな。
 弟をふつう『ベイビィ』と呼ぶだろうか?そんなもの嘘だとすぐに知れる。しかも、嘘をついてる、ということを、隠そうともしない。タチが悪い。
 男は、見た目だけは優等生の笑顔を崩さないまま、抱き上げた毛布の塊をもう一度抱え直して、ジョルノの前をすり抜けていった。ジョルノには男を引き止める理由がなく、毛布の塊が本当に『弟』なのかどうか、あの指はどういったことか、そもそもアレは、人間だったか?
 疑問はなにひとつ解決されないまま、ネアポリスの薄暗い路地に放置された。





9:霊感もなくいきなりその存在を知った人と新参者な(守護)霊。人は?

 なんの悪夢だと思わなくもない。
 これまでの人生でそれなりに悪い行いをしてきた自覚がないわけじゃないミスタだが、それにしたってこの仕打ち。すべては今日乗ったタクシーのナンバープレートに4の数字が入ってたのがいけなかった。
「ったくよォ…こちとらジョルノのお守りで手ぇいっぱいだっつぅーのに…」
「おいおいおいそっちの道はこの時間帯クソ渋滞に決まってんだろうが!俺の話聞いてんのかよ運転手よォッ!」
「うるっせぇよオメー黙りやがれ!!」
 思わず発したミスタの怒声に、タクシーの運転手がヒイイッと悲鳴をあげた。すいませんすいません殺さないでくださいイイイというあたりで、ミスタもようやく我に返る。そうだ、運転手にとっちゃ乗車客は俺だけなんだ。このやかましい迷惑野郎は、俺にしか見えていないんだった。
「大声で怒鳴るんじゃあねーよ『拳銃使いのミスタ』」
「その言葉そっくりそのままオメーに撃ち返すぜッ」
 ミスタはため息とともに後部座席となりに座るメガネ小僧に目をやった。クルクル頭のメガネはさっきまで運転席に乗り出していた体をシートにふんぞり返らせて、足を組みゆうゆうと両手を頭の後ろにやっている。
 元パッショーネの暗殺チーム、氷のギアッチョ。
 ある日、いきなり、だ。ミスタの元に現れて、今日からオメーの守護霊ってことになっちまった、よろしくたのむぜなんて言ってきやがった。それはもういきなり、堂々と。
 なんの因果で、直接戦い合って殺した相手に、守護霊になってもらわなきゃならねぇーんだ。
 しかも幸か不幸か、彼に生前の記憶はないようだった。自分が何者か、どういったスタンドを使って戦っていたか、ミスタとどれほどの覚悟を突きつけ合ったか、そして自分たちの属するチームがどうなったか。
 何も知らない。すべて忘れている。
「ミスタ…あなた大丈夫ですか?疲れてるんじゃあ」
 突如かつての敵が幽霊となって現れ、なかば恐慌状態でジョルノにありのまま起こったことを話したら、まぁ予想どおり、最初はかわいそうな人を見る目で見られ、それでもミスタが必死に訴えたら、少し考える振りを見せ、そうゆうこともあるかもしれないですね、とうなずいた。
「まさか…おめーんとこにも守護霊が…?」
「そんなわけないでしょうバカですか?」
 結局一刀両断され、害はないようですし自分で面倒みてくださいと放任主義の新ボスは爽やかにミスタの訴えを受け流した。鬼だ、悪魔だ。
「だいたい俺は幽霊だとかそうゆうのはよォ…苦手なんだ、なんかよくわかんねーから…」
「だからァ俺は幽霊じゃあなくて守護霊だっつってんだろォーが」
「変わんねぇーんだよどっちだってッ!つーか、守護霊ってゆうんなら普通味方がなってくれるもんじゃあねぇのか、ブチャラティたちは何やってんだ」
「俺はおめーの『味方』だぜ、なんせ守ってやってるんだからなぁ」
 ギアッチョは思いのほか屈託ない笑い顔を向けてくる。舌打ちひとつ、ミスタは車窓を流れる景色を睨みつけた。
 なによりも厄介なのは、こいつが悪い奴じゃあないってとこだ。
 いやギャングでしかも人を殺しまくってたんだからきっぱりと悪い奴だが、こうやって話してみれば、敵同士じゃないところで出会っていれば、ごく気軽な飲み仲間ぐらいにはなってたんじゃあないかと、思ってしまう、それが一番ミスタにとって厄介なのだった。





10:雨に濡れたペットを拾ったご主人様。ペットは?

 濡れそぼってる姿は捨てられた子犬に似ていてあまりに憐憫を誘ったが、タオルとあたたかいスープとフォカッチャを与えると、とたんに夏の海を駆け回る犬レベルに回復した。それはそれで見ていておもしろいと思うリゾットは、もともと犬猫が好きな性質だ。
「お、だいぶ元気になりやがったなァ〜〜まだ食うか?」
「いいの!?」
「おお、食え食え〜リゾットのおごりだ!」
 好き勝手言ってエサを与えているホルマジオは、焼きたてのフォカッチャをのせた皿をもうひとつ、少年の前に置いてやる。少年はタオルを頭にかぶったまま皿に飛びついた。
「おいおい、どんだけ腹すかしてたんだよ?おめーちゃんと普段から飯食ってんのか?つーか道ばた暮らしか?」
「ちがうよ、俺はちゃんとしたギャングだッ」
「はいはいギャングならもちっと太っておっきく育て、そんなガリッガリのなりしてねぇでよ」
 ホルマジオが少年をストリートチルドレン扱いするのも仕方ない。仕事を終えアジトに戻ってくると、軒下でびしょ濡れの少年がうずくまっていた。気づいたのはリゾットで、声をかけたのはホルマジオだった。
 オイ生きてるかぁくたばるなら余所いってくたばれ、とホルマジオが足で突つくと、少年はガバッと顔をあげて一言、「腹が減って動けねえ!」
 さすがにアジトの前で行き倒れられると面倒なので中に連れ込んだ。
 フォカッチャで少年を手なずけるホルマジオを横目に、リゾットはインスタントコーヒーをいれたマグカップを3つ、テーブルに置いた。ここ数日冷たい雨が続いたせいで、暖房をつけていても部屋のなかは冷えきっている。
 リゾットは自分用のマグカップに口をつけながら、タオルをのっけたままの少年の頭を見下ろした。
「親か保護者はいるのか?」
「だから俺はギャングだって!学生じゃあねーんだぜ…」
「迎えに来てくれるような人はいんのかよ?」
「…ブチャラティなら」
 そっか、と少年の頭をがしがし撫でるホルマジオの横で、リゾットは少年の口から出た名前が脳裏を騒がせる予感がした。ブチャラティというのはおそらく、『パッショーネ』の管轄するネアポリスの一地区を預かるギャングだ。
(こいつがギャングを自称するのも、あるいは本当なのかもしれねえな…)
 まったく信じられないが。なんせ数分前は道ばたで空腹をかかえ死にかけてたし、今は熱々のフォカッチャに犬みたいに食らいついている。見た目はやせっぽっちの小柄な少年だ。ただの学生ぐらいにしか見えない。
(もしかしたらこいつも、『スタンド』を使うのかもしれねえってわけだ)
 そんな頼りなげな少年が本当にパッショーネの一員としたら、つまりはそういうことだろう。パッショーネのボスが、『能力』をもつ者を積極的に引き入れてることは知っている。
 とはいえ、別にリゾットに少年をどうこうする気はいっさいない。暗殺の指示がでてるわけでもなし。
 仕事じゃなければ殺しなんて面倒はしない主義だ。それはチームの連中に共通していえることだった。殺人を悪とも思わないメローネなんかは、それこそ仕事でもなく女を殺すことはあるが。『ベイビィフェイス』の息子を育てる『お試し』のために。
 もし少年がパッショーネの一員なら、そしてスタンドを使うのなら。
 もう二度と会うことがなければいい。ごく自然にそう思う程度には、リゾットは年下に甘い。
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