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王道変換バトン.1-5 all


1:昔から共に生きてきた主と従者。主は?

 『それ』に表情というものを感じてしまうのはごく主観的な問題に思える。あるいは本体である己の情動とリンクしているのだろうか。としたら正しく『それ』は笑っているのだ。今この瞬間に。
「悪ぃな…最期まで、もってくれよ……」
 急行列車の轟音に耳をつんざかれ、もはや自分の声さえ拾えない有様だが、『それ』はプロシュートに応えるように無数の目を見開き、致死の煙をまきちらした。ボロボロと剥離する体を厭いもせずに。
 いい子だ。プロシュートは千切れず残った腕をなんとか持ち上げ、背後にいるだろう『それ』を抱き寄せる。
 触れる、という感触はない。『それ』に触れれるのは似たような構造をもつ他者の精神具現物体だけだ。たとえばメローネのもつ似たようなモノが生み出した『息子』が、その小さな体で手で指で、プロシュートの『それ』におそるおそる触れようとするのを見たことがある。子供が、大型犬におそるおそる触ろうとするのと似た仕草で。
 おまえは俺の一部なはずなのに、俺が触れられないってのは、おかしな話だな…。
 プロシュートは血だらけの手で『それ』の頭を抱き寄せ親愛のキスを施したかったが、『それ』は力つきたように順に順に体中の無数の目をとじていく、ゆっくりとゆっくりと、ボロボロ剥離する体、列車の車輪に巻き込まれ千切れていく、最後に残った瞳がプロシュートを見て、やっぱり笑っているように見えた、その瞳が閉じるのに今度はプロシュートが呼応して、視界がねむるように暗く落ちていく。自分の死を客観的に眺めるようだった。予想していた以上にごく静かな幕引きだった。自分の一部である『それ』と額を寄せ合ってねむりに落ちた。





2:相方をかばった怪我が原因で記憶喪失に。記憶を失ったのは?

「つぅーわけだ。わかったか、メローネ」
「へんな名前だ」
「知ってるよ、けどそれがてめーの名前だッ」
 面倒になってギアッチョはベッドに身を投げた。安宿のスプリングが不穏な音を鳴らす。
 寝転がって天井を睨んでいると、視界ににゅっと顔が突き出てきた。アシンメトリーの長い髪がカーテンのように降り注ぐ。
「あんたの名前は」
「ギアッチョ」
「ギアッチョ。へんな名前だ」
「うるせぇなッ!!」
 なんでこんな目に、と思うわけだがその原因は見上げた先、男の頭に巻かれた包帯とかガーゼとか、そうゆうのが雄弁に語っている。不意打ちを食らって敵の襲撃を受けたギアッチョの目の前に、バイクが飛び込んできた。突っ込んで来た末に、転倒。さいわい軽傷だったが打ちつけた頭が重症だった。いやもともとこの男の頭は重症だったから今さらの話ではあるが。
 男の、ブルーに血の色が透けたヴァイオレットみたいな瞳が、寝転がるギアッチョの顔を覗き込んでくる。
 妙に落ち着かないとおもったら、マスクをしてない。あの奇妙なマスクを通さず見る顔は、どこか男っぽさが強い。長い髪がざらりと肩を落ち、ギアッチョの眼前に降りかかってくる。
「それで、『ギアッチョ』と『メローネ』はどうゆう関係だったんだ?」
「うるせぇ黙れもっぺん事故って飛び散った記憶の欠片かき集めてきやがれボケが」
 面倒きわまりない。こいつと自分の、関係性を表す言葉など。そんなもの。





3:敵に操られ仲間を攻撃! 操られたのは?

 ものすごいスピードで振り下ろされた手をリゾットは惰性で避けた。あまり動き回ると足下の小さな生物たちを踏んでしまいそうだ。かといって、そっちに気をまわしつつ敵襲をかわすにも限度がある。
「ほんと悪ぃなリゾットォ〜〜おめーに恨みはねえんだけどよぉー」
「この状況を考えるとその言葉も信じられねぇがな」
 それでもリゾットには笑みを浮かべるぐらいの余裕はあった。
 なんせリゾットのスタンド能力は一撃必殺だ。相手はすでに能力射程距離内にいる。いつだってその気になれば仕留められるわけだが、いまだそれを実行しないのは、相手が本来は同じチーム内のメンバーだからだ。ついでに本人の意志じゃない。
「せめて『リトルフィート』を解除することはできないのか」
「だーかーらぁ操作されてんだって、なんか俺の脳みその一部分がよぉ…おかげで俺自身は身動きもとれねーのに、スタンドは元気に走り回ってやがる…おいリゾットあぶねえ!」
 ホルマジオの声に反応してリゾットは飛び退る。目の前を、リトルフィートの鋭い爪が切り裂いていく。ホルマジオの警告はリトルフィートの動きより一瞬速い、ということは、精神の一部を操られながらも、ホルマジオ自身はやはりリトルフィートと意識がリンクしているのだろう。
 ふむ、と考え込むリゾットの足下で、小さな生き物たちが声を上げる。
「オイッ!何やってんだよリゾット!」
「さっさとメタリカ使えって!」
「あ、あぶねえッ!おい!もうちょっとで踏まれるとこだぞ!ちゃんと下見ろ、下ッ!」
 ちょっと大きいネズミぐらいのサイズに縮まったギアッチョとイルーゾォとプロシュートが、リゾットの足を囲んでギャアギャア騒いでいる。見ようによっては可愛らしいお人形だが、リゾットはその凶暴性を熟知しているので、一切の同情も覚えない。
「あんまりちょろちょろするな。どこかに隠れていろ」
「おめーこそちんたらやってねぇでさっさとスタンド使いやがれッ!」
「メタリカ出せばしまいだろーがよッ!」
「うわ、きたな!リゾット靴ぐらい磨いとけよ」
「…こいつらにメタリカ使ってもいいか」
「なんでもいーから早く俺を止めてくれェ〜〜〜」





4:新任の先生と入学したばかりの生徒。先生は?

 たしか飯に誘ったのはイルーゾォの方からだ。それはまちがいない。ペッシは何度も自分にうなずいて言い聞かせつつ、ちらと顔をあげた。
 何度みても向かいに座るイルーゾォはコミック漫画を読んでいる。
「………」
「………」
 ま、間がもたない……。
 ペッシはふ〜っと視線を流し店内をなんとなしに眺めることにする。この行動もすでに3度目だ。ごく平均的なカフェテリア。客もそこそこ賑わっている。
 普段ならこうしてペッシを飯に連れて行くのはプロシュートかホルマジオだ。リゾットの場合もある。時々メローネもいたりするがペッシはいまだにメローネがちょっと怖い。ギアッチョの方が分かりやすくて安心できる。唐突に電撃的に不条理に怒鳴られることはあっても。
 ペッシがこのチームに加入して3ヶ月。本当なら今日もいつも通り、プロシュートと飯をする予定だった。けれど出かける段階になって緊急の連絡が入った。
 リゾットからの呼び出しを受け、プロシュートは舌打ちと玄関の壁に蹴りひとつ、俺にかまわねぇで先に飯いっとけ、と言い残して仕事に行ってしまった。
 そのとき偶然アジトにいたのがイルーゾォだ。
「………」
 店内をさまよわせていた視線を一周させて、ペッシは再び目の前でコミックに没頭するイルーゾォを見る。詳しくはしらないが日本の漫画らしい。イルーゾォの行きつけだというこの店に入って、席について、メニューを開いて注文して、その2秒後にはカバンから取り出したコミックを広げていた。
「……あの、イルーゾォ」
「ん?」
 やはりコミックから目を離さず、イルーゾォが返してくる。
「えーと。ここにはよく来るのかい」
「あーまぁそこそこ」
「へえ……」
「………」
「………」
 た、助けて兄貴ィィーーーーーッ!!!
 心の中でプロシュートに助けを求めながら、いやこの際ホルマジオでもリゾットでもギアッチョでも、最悪メローネでもいい、とにかく誰かこう、間のもつトークをできる人間をこの場に派遣してくれと、ペッシはじゃっかん泣きそうだった。
 嫌われてるわけじゃあない、と思う。イルーゾォは比較的ペッシに対して距離をおいた接し方をしてくる。それはある意味の気遣いだ。
 聞いたところによると、イルーゾォもチームに入って長いわけでもないらしい。もちろんペッシよりは前だが。チーム内の新人を預かれるほどのキャリアはないということだ。
「………」
 だからこうやって、イルーゾォがわざわざペッシと飯を一緒にする必要は、まったくもってない。つまりこれはイルーゾォのボランティア精神だ。たぶん。まだ街に不慣れなペッシのためを思ってのことだ。…たぶん。
「………」
「………」
 イルーゾォは相変わらずコミックに没頭している。読み終える気配はまだぜんぜんない。これでもし料理がきても読みながら飯を食う人だったりしたらどうしよう。ペッシにできるのはただ祈ることばかりだ。





5:出会ってしまった民間人と王族(もしくは貴族)。民間人は?

「フランス王室の血を引いてるんだぜ。本当だ」
 メローネの揺らすワインボトルから、血のように赤い水が滴る。それがよく磨かれたグラスの中に円く踊ってそそがれる。
 差し出されたグラスを受け取って、プロシュートは軽く香りを楽しんでから、一気にあおる。のどを滑る重厚な渋み。これは上等のフルボディだ。
「フン…それで、フランス王室の血を引く貴族が、今は泥棒のまねごとか?」
「悲劇的だろ?フランス革命で殺されたルイ18世の息子だって、自分がフランスの王ってことをすべて忘れて民間人に成り下がったのさ」
「で、おまえはそれの孫の孫って?」
「いや、俺は正確にはオルレアン家の系譜だ。今でも正統な血筋がイギリスで続いてる。革命でフランスから亡命してね」
「おとぎ話だな」
 鼻で笑いつつもおもしろがる様子のプロシュートに、メローネは悪いおとなの笑みを浮かべながら、じかにワインボトルをあおる。
 先日殺したターゲットの家から、くすねてきたというロマネコンティ。最高峰と呼ばれるフランスワインは、安くて10万からの品物だ。まず普段飲む機会などない。
 そんな嗜好品を、最高級ホテルでも豪奢なバーでもなく、こんな味気もくそもないアジトのダイニングでかっ喰らっている。冒涜もいいとこだ。それを言うなら、プロシュートやメローネの存在自体、ジーザス・クライストへの冒涜そのものだった。
「おとぎ話と思ってたよ、俺も昔はね。マードレが作った夢物語だろうって。でもある日、俺は見つけちまったんだ、マードレが大切にしまっていたジュエリーボックスの中に、オルレアン家の紋章入りのブローチを」
 メローネがミュージカルのように大げさに両腕を広げ戯れ言を披露するのを、観客席のプロシュートは笑いながら見上げた。
 ダイニングテーブルに腰かけて足を組むメローネは、イスに座るプロシュートから見れば、白々しい電光を受けてあまりに安物の王族だ。せめて玉座を彩るのがロマネコンティで救われる。
 楽しげに笑って、ボトルをあおるフランス王位継承者は、唇から赤い水をこぼれさせる。黒い服にポタポタと染みを落とす。
「お行儀が悪いぜ、殿下」
「あーらら。舌で拭いてくれないか、そこの一般市民」
「調子のってんじゃあねーぞ」
 高貴な血の色の水が安く消費されていく。チープなおとぎ話はたかが酒の肴だ。
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