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究極の選択その2(御題) all


天国か地獄か

 メローネは生き物が嫌いだ。生ぬるくてぐにゃぐにゃしてて気味が悪い。
「ほーらよッ!」
「うわぁ!やめろ!うわぁあ~~~ああ……ぁあ…」
「キモチわりィ声だしてんじゃあねーよクソがッ」
 ホルマジオはわひゃひゃと笑いながら、抱きかかえた猫をもう一度メローネに向けて放り投げた。メローネは無様な声をあげながらソファの上でのたうち回っている。猫はといえば、メローネの素肌の腹の上に軽く降り立つも、動きまわる地面を嫌がり、テーブルの下に逃げてしまう。
 ホルマジオがそうやって猫をメローネに向けて放り投げるという遊びを始めてから、すでにそこそこの時間がたつ。
 ふだん生意気なメローネをいじめられる絶好の機会ということで、ホルマジオはそうとう楽しそうだが、同じくリビングでテレビを見てるギアッチョとしては、やかましいことこのうえない。
「ったくよォ~~猫ごときでヒャアヒャア叫んでんじゃあねーぜ……ギャングだろうがよォ、ギャングってのはもっとこう、こうじゃなくちゃなァ」
 ギアッチョが見てるのは日本のテレビアニメだ。妙にモニアゲの長い猿顔の男が、金銀財宝をたんまり抱えて、トッツァ~ンとかなんとか言っている。横にはおなじみナイスバディの美女だ。ギャングはこうでなくてはならない。
「ギアッチョそれ、ギャングじゃなくて泥棒だよ」
「泥棒じゃねえッ!怪盗だッ!」
「知ってんじゃあねーかよ…」
 ペッシの親切な横やりをはねのけるギアッチョに、イルーゾォは呆れた顔を見せる。
 猫がイルーゾォの足元にしっぽを絡ませてくる。イルーゾォがかがんで手をのばすと、するりと通り抜けてしまった。
「かわいくないやつ。ギアッチョみたいだな」
「ああー!?なんか言ったか!?」
「お~いミャアちゃんどこいったァ~?」
「あっちですぜ」
 いたいたと嬉しそうにホルマジオが、また猫を抱えて戻ってくる。
 逃げればいいのにソファに転がったままのメローネは、また気味の悪い悲鳴をあげた。
「覚えてろよホルマジオ!今度あんたの枕もとに、今までに関係もった女全員集めて並び立たせてやるからな!」
「ヒュ~♪そりゃ壮観じゃねーか。みんなで仲良くベッドインとしゃれこむぜ。そぉ~ら!」
「ひぃやあああぁぁぁ………」





愛情か友情か

 プロシュートがずいぶん熱烈な目線を向けている。
 相手がレディたちなら皆が花と顔をほころばせ頬をばら色に染めて恥じらいで目をうつむかせただろうが、残念ながらプロシュートの視線の先にある『それ』は、人間的な美醜など感知せず、すまし顔でガラスの容器におさまっている。
「プロシュート」
「ああ。買い物終わったのか」
 リゾットが横に立っても、プロシュートは熱烈な目線を『それ』から外そうとしない。
「……いくら道行く女性にはかたっぱしから声をかけるのがイタリア男の流儀だとしても、それはさすがに」
「冗談を言ってるんだな?リゾット?そうじゃなきゃ殺す。そうであっても殺す」
 ようやくプロシュートがリゾットの方を向いた。だが向かないでほしかったと思うぐらい、その両目は殺気に満ち満ちている。
 その殺気から逃れるためにリゾットはそっ…と視線を外し『それ』を見やった。
「高いな」
「アンティークだからな。だが美人だ」
 プロシュートがさっきから熱心に見つめていたのは、ショーケースにおさまった女の子の人形だった。
 フワフワのプラチナブロンド、青いガラスの瞳。不思議の国のアリスにでも出てきそうな、中世風のドレスを身にまとっている。
「なかなか出回らないレアもんらしくて、けっこう探してたんだが、まさかこんな街中で出会えるとはな。どうしても手に入れたいところだが、あいにく持ち合わせがない」
 なるほど。熱烈な目線の理由はそれか。
 リゾットはプロシュートという人間に敬意をもっていた。大胆不敵な行動力と、何者も説き伏せるカリスマ性、明晰な観察眼と研ぎすまされた直感。そういった人間的魅力に加え、己の主義主張によってつねに整えられた外面が、よりいっそうこのプロシュートという人間を圧倒的な存在として輝かさせていた。
 彼のもつポリシーや哲学というものすべてに、うなずけなくても、自分とはまったくちがった人間という意味で、リゾットはプロシュートを尊敬している。
 だからこそ。
 だからこそ、忠言すべきと思うのだ。プロシュートとはそこそこ長い付き合いだ。同じチームにあり、率いる者同士でもある。
 すべてのことを隠し立てせず開け放って分かり合おうとは思わないが、尊敬できる人間に対してこそ、敬意をもった忠告ができてしかるべきなのだ。
「プロシュート。人の性癖や趣向に口を出すのは本意じゃないが、さすがに人形というのは」
 言い切る前に思い切り胸ぐらを掴みあげられた。次にくるパンチとキックを予想してリゾットは構えをとる。
 そうすると頭突きがきた。避けきれず右頬に喰らう。さすがに痛い。
「目が覚めたか?」
「覚めた。どうやら寝ていたらしい」
「そうだろう。おまえの目、あいてんのか閉まってんのか、わかりにくいからな。今回はしょうがねぇなぁ~ってやつだ」
 プロシュートはフンと鼻を鳴らして胸ぐらを離した。
 リゾットはプロシュートと並んでショーウィンドウのドールを見る。ガラス玉の無垢な目。初めて赤ん坊を抱いたときのことを思い出した。赤ん坊の目は本当に、吸い込まれそうな、なにもない、『無』の瞳なのだ。それからいろんなものと出会ってたくさんの美と悪を知って、光り輝きあるいは暗く沈む。
「プレゼントにしちゃ対象年齢が幼すぎる気がするが」
「そりゃな」
「それに高価だ」
「レディに贈るモンに高いも低いもねえよ。それこそおまえ、年齢と高価さを秤にかけてたら、レディに嫌われるぜ。10歳でも相手は立派な女だからな」
「自分の娘をそんないやらしい目で見てるのか?」
「おめーのその発想のがいやらしいんだよこのマンモーニが」





愉快犯かサディストか

 人を抱きしめたときの心地よさをしっている。
 その肉体のもろさも。
「おかえりィ~」
 と言ってなぜかメローネが両手を広げ玄関で待ち構えていた。
 リゾットは、本気でなぜかわからなかったので、それにメローネが何かを企んでる気がしてしかたなくて、踏み出しかけた足を一歩引かせて、じっくりとメローネを観察した。
「なんだよ?」
 メローネは変わらず両手を広げ、廊下に立ちふさがっている。顔には気持ち悪いぐらいおだやかな微笑み。
 これは何かある。
「そこをどけ」
「おいおい、ヒドイんじゃねえか?せっかく仕事帰りをねぎらってるってのに」
「メタリ」
「おいおいおい!リゾット!」
 リゾットの声をかき消すように喚いてから、メローネはため息をついて腕組みした。これでいいんだろとばかりに、体を横によける。
 リゾットは相変わらずメローネに不審な目を向けながら、メローネの横を通り過ぎた。
 背後から、声がかかる。
「ボジョレーのワイン、買っといてくれたの、あんただろ?」
「…ああ、」
 ようやく合点がいった。フランスのボジョレーで造られる新酒・ヌヴォーは、この時期だけ楽しめる軽快な赤ワインだ。去年は忙しくて期を逃し、メローネがずいぶん残念がっていた。街中で偶然『ボジョレー・ヌヴォー入荷』の文字を見かけたとき、リゾットはふとそのことを思い出したのだ。
「安物だがな」
「ああ、なんだっていいんだよ。その年に収穫したブドウから造ったその年の新酒、てのが重要なんだ。覚えててくれてうれしいぜ」
 そう言って笑ってメローネが両腕を広げると、今度はリゾットも避けなかったので、メローネは機嫌良くリゾットをハグした。
「グラッツェ」
 メローネの手がリゾットの肩を抱き寄せ、布地に鼻先を触れさせる。これはメローネが本心からの感謝を表す仕草なのだと、以前プロシュートが言っていた。
 リゾットはハグを返さなかった。
 かわりに、片手でメローネの背中をぽんぽんと叩く。
 メローネは満足したようにリゾットから離れて、さぁはやくヌヴォーを開けようと笑う。
 リゾットは、人を抱きしめたときの心地よさをしっている。その肉体のもろさも。幼い頃、母に、父に、抱きしめられた記憶、弟妹たちからの親しげなハグ、それから、あの子へのハグ。酒酔い運転の車に轢かれ、無惨に切り裂かれたあの子の体。抱きしめた記憶。指の間から流れ落ちる血と肉片。
「ギアッチョのやつ、ずいぶん好き勝手に改造してやがるな。シートが倒しにくいったらねぇぜ」
 プロシュートがクラッチを強く踏み込んでブレーキをかけると、車は停車線ぎりぎりですべらかに停止した。ギアをローに入れ、赤信号に目をやりながら、プロシュートの手はすでに吸いかけの煙草に伸ばされている。
「給料の大部分をつぎ込んでるようだな」
「あいつが金使う対象なんて、車、服、漫画だろ」
「それだけ聞けば妙に男らしいが」
「最後のいっこさえなけりゃな」
 リゾットは助手席から窓に流れる夜の光を眺めていた。街明かり、尾を引く赤や黄色のテールランプ。ローマへの道は今日も大渋滞だ。
「このへんが混んでるのはいつものことだが、今日は異常じゃねーか?」
「事故でもあったのかもな」
「ああ、みてぇだな。あそこ」
 プロシュートの指し示す方を見やると、歩道に乗り上げフロントが大破した車が一台見えた。相手は車かバイクか、あるいは歩行者か。
 思い出そうとしなくったって、リゾットの腕には、記憶の淵からするすると、あの感触がよみがえる。抱きしめた両手からこぼれ落ちるなまあたたかい体。
「あーあ、こんなちんたら走ってたら眠くなっちまうな。高速でおもいっきりぶっ飛ばしてぇ」
「やめとけ。俺に抱きしめられたくなければな」
「ハ?」
 リゾットの腕はもう大事なものを抱きしめない。
 心地よさはじゅうぶんに知っていても。


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