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西風の見たもの all パロ


※全員が貴族の兄弟パロディ




メローネがプロシュートと落ち合うのはいつも城館の最上階にあるテラスの庭園。館の前所有者だった侯爵の、本妻の趣味で、多くの薔薇が咲き乱れるそこは、緑と色彩に囲まれたさながら空中庭園だ。
イタリア貴族の贅沢な暮らしを象徴する庭園は、夕方前の少しの時間だけ、館に住むすべての者に開放される。それ以外の時間帯は、侯爵の『正当な血筋』の者しか立ち入ることは許されない。
つまり、侯爵と本妻との子であるメローネと、どこぞの女が産んだ子であるプロシュートが顔を合わすには、夕方前の空中庭園かファミリーのそろう夕食時しかありえない。ついでに、夕食時には他の『兄弟』も全員いるわけだから、気兼ねなく話をするなら結局ここしかないのだ。
「煙草は?」
「禁煙中」
メローネが差し出した煙草ケースを、ベンチに座るプロシュートは見たくもないというように手で払った。ふてくされてる横顔をみて、メローネは笑う。
「禁煙中?謹慎中じゃなくて?」
「あの野郎の命令でなんてムカつくから自発的に禁煙してることにしてる」
愛人の子とはいえ、侯爵の子供たちの中では3番目に年嵩のプロシュートを罰せられるのは、本妻の子であり長兄のリゾットだけだ。もうひとり、リゾットとプロシュートの間にはやはり私生児のホルマジオがいるが、数年前に成人して館を出てしまっている。それにホルマジオは、自分の兄弟みんなを愛していたから、とくに一緒にいる時間が長かったプロシュートに手を上げるなんてこと絶対にない。
数日前、プロシュートが歩き煙草していて落ちた煙草の火種が原因で、ボヤ騒ぎがあった。火はすぐさま消されたが、城館の地下にあるワイン倉庫の一部が燃えた。ワイン倉庫は侯爵のお気に入りのボトルを集めた特別な場所だった。
侯爵はすでに死に、すべての財産は現在リゾットが相続し管理しているから、いわば焼けたワインの樽もリゾットのものなわけだが、そんな理由でプロシュートは罰せられたわけじゃない。
侯爵の『正当なる血筋の者』にとっては侯爵の残したものすべてが、なにものにも代え難い価値をもつのだ。その理屈でいくと、プロシュートたち私生児だって侯爵の残したもののひとつじゃないのかと、メローネは思うのだが。
リゾットがとりわけプロシュートを厳しく処分するのには理由がある。プロシュートは『正当なる血筋の者』じゃないにもかかわらず、侯爵の特別な場所だったワイン倉庫に、侯爵がまだ生きてた頃から自由に出入りできた。
プロシュートは侯爵に可愛がられていた。だから館の中でいつだってどこでも歩き回ったし、他の私生児たちのように、息を潜めて暮らすということをまったくしなかった。その態度のでかさは、侯爵に可愛がられてることで調子にのってるというよりも、プロシュートの生まれもった気質らしかったが。
そのうえプロシュートは金髪だ。それは『正当なる血筋の者』の証のはずだった。私生児でありながら金髪であることでプロシュートの存在は余計に目立っていた。逆に『正当なる血筋』でありながら黒髪のイルーゾォは、よりいっそう立つ瀬がなくなる。
なんにしろ城館の中でもプロシュートは存在感と発言権をもっていて、愛人の子である他の兄弟からも羨望を集め希望を与えていた。だからこそ侯爵亡き後、館のあるじとなったリゾットは、プロシュートを厳しく取り扱うようになった。私生児である兄弟たちの力を断ち、弱めるために。それが、長兄であり『正当なる血筋の者』であるリゾットの使命だった。
プロシュートはボヤ騒ぎの罰として一週間懲罰房に軟禁され、昨日ようやく解放されたところだった。解放されても城館内を歩き回ることは禁じられ、出歩ける部屋を制限されている。
軟禁中はメローネさえ会うことがかなわなかった。メローネはとくに、本妻の子供の中でも規格外で異端児、愛人の子たちともつながりが深い。言動についてはかなり目をつけられている。
それでも好き勝手に振る舞うメローネを、リゾットは咎めもしないが、もはや見捨てているに近い。だから余計にメローネは好き勝手をする。悪循環だ。侯爵の子供たちはみんな、成人を過ぎれば館にいるのも出るのも好きにしていいという掟だが、メローネは成人するまえにファミリーから追放されるだろうと自分で予想している。
プロシュートは今年成人する。成人したらプロシュートはまちがいなく館を出て行くだろう。
さてどうしようかとメローネは考える。プロシュートがいなくなれば館は平穏に包まれるだろう。火種が消えてしまう。それはおもしろくない。
庭園のすみの手すりから身を乗り出して外を眺めていると、傾きかけた西日をメタリックボディに反射させた一台の車が、館の正門前に停止した。メローネは口の端を上げて笑った。メローネの望む火種を起こしてくれるかもしれない期待を乗せた車だ。
「あれかな。新しく見つかった侯爵様の愛人の子供ってのは」
「どこまで増えんだよ俺らの兄弟は」
「あれはあんたら誰かの『兄弟』?それともまた別の女?」
「俺ともホルマジオともペッシとも別の母親だ。前の夕食の時リゾットが言ってただろ」
「そうだっけ?まぁいいや、おもしろい奴ならなんでも」
死んだ侯爵はかなりのプレイボーイだったらしい。爵位をもつなら女遊びはやりたい放題だが、結婚してる身でこれほど別の女たちとの間に子供をもうけてるのは珍しい。しかも母親が誰であろうと、自分の子供である限りは館で保護せよという遺言を残している。嫌でもリゾットは増えつづける兄弟たちを集め館に住まわせなければならない。
「今日の夕食はひさびさに全員が集まるぜ、プロシュート」
「ホルマジオもか?」
「新しい子を迎えに行って、ここまで連れてくる約束だ。あの車、またホルマジオのやつ新車買ったんだな。ただの料理人のくせに金回りいいみたいじゃねーか」
「ミラノじゃ売れっ子だ。おめーは知らねーだろうけどな」
横に並んで、停車した車から降りてくる人影を眺めるプロシュートの横顔に向け、メローネはいやがらせに煙草の煙を吹きかける。
退屈はごめんだ。



ギアッチョには生まれつき父親がいなかったから、半年前に母親が死んだあと、黒服の連中がボロアパートにやってきて、あなたの父親である侯爵様の遺言であなたをファミリーにお迎えすると告げられた時も、何言ってんだ俺に父親はいねえと当然のように言い放った。
父親?しかも侯爵様だァ?ふざけんな、昔々のおとぎ話じゃあねーんだ。そんな都合のいい話あるわけねーだろ。誘拐か?誘拐して人身売買でもしようってのか?ゆっとくが俺の家はここだ、家賃は半年先までかーちゃんが払ってくれてる、かーちゃんが俺に残してくれた唯一のモンなんだ、何人たりとも俺をこの家から連れ出せはしねーぞ。
大声でわめき散らすと、ならば半年後に再びお迎えにあがると黒服たちはあっさり去っていった。侯爵家の家紋が彫られた時計を置いて。
なんのこっちゃと夢でも見た気分だったギアッチョだったが、まさかなと思いつつ、その時計をもって母親の兄の元を尋ねると、あっけなく言うのだった。おめーの父親はまさしく、その家紋の侯爵様だ、と。
そして半年後、本当に迎えは来た。ちょうどアパートの契約が切れる日だった。
「よォ~~兄弟!会えて嬉しいぜェ!」
「うおっ!?」
扉を開けたとたん、見知らぬ男に抱きつかれて、ギアッチョは反射的に全力で抵抗した。引きはがすと、男は短い髪にラインを刈り込み、耳には三連ピアス、ヘソを出したパンクなファッションだった。
ほら、やっぱりだまされた!この男はギャングかなんかで、俺の命をいただきにきたに決まってる!
「馬鹿言ってんじゃねーぜ、俺はただのパティシエだっつーの」
「パティシエだと!?その顔で!?余計に信用ならねぇ!!」
「オイオイオイオイオイ、こりゃとんだ活きのいい弟ができちまったもんだなァ?」
プロシュートみてぇだと笑う男は、ひどく人好きのする雰囲気があって、たしかに悪い人間じゃなさそうだった。
「荷物はどれだ?車に乗せな。長旅になるぜ」
アパートの前に停まっていたのはアルファロメオのスポーツワゴンだ。ギアッチョは思わず目を輝かせた。小さい頃から車が大好きで、とくに国産車はギアッチョの憧れだ。
アルファロメオのシートに揺られながら、運転席に座る男は道中、いろんなことをギアッチョに教えた。男の名はホルマジオという。ギアッチョと同じく、侯爵の子供だそうだ。つまりギアッチョの兄ということになる。ただし、母親はちがう。本妻の子でもない。
「そうゆう奴が、オメー以外に俺を含めて3人いる。プロシュートとペッシと俺。みんな母親はちがう。おもしろいぐらい全員似てねーから、俺らみんな母親似なんだなァきっと」
たしかにギアッチョも母親似だ。天使みたいなくるくるパーマなんかはまさに。
「兄弟の中じゃあ、俺は2番目、プロシュートが3番目だ。プロシュートは過激なヤツだが面倒見はいい、後から来たペッシのこともなんだかんだ言いながら結局面倒見てやってたからな。オメーもかわいがられるだろうよ。ペッシは6番目で、オメーみたいに侯爵の子供ってことがわかって引き取られてきた。来たばっかの頃はビクビクして情けねー野郎だったが、プロシュートに鍛えられてだいぶしっかりとはしてきたな。この二人はオメーの味方になってくれる。安心していいぜ」
「味方?俺の敵もいるっつーのか?」
「まあなァ~~~そのへんは複雑でよォ~」
ホルマジオがニヤリとした笑みを運転席から寄越してくる。
「さっき言った連中はみんな私生児で、俺ら兄弟にはもちろん本妻の子供たちもいる。リゾットとメローネとイルーゾォ。リゾットは長兄だ。侯爵の正式な後継者。つまり今の館のあるじってわけだな。基本的に館の中じゃあリゾットが『法律』だ、長兄の決定に逆らえば兄弟といえど処罰される」
「はァ~?兄貴から処罰を受けるってなんだよ。変じゃねーか」
「そう、変なんだよ、貴族ってのはな。俺は貴族体質には合わなかったからよォ、館を出て菓子職人やってんだ。基本的に未成年は館に住んでスクールに通わなきゃなんねーが、成人したら自由にしていいってことになってる。オメーいくつだ?」
「15」
「そうか、じゃあペッシより上だな。オメーが兄弟の6番目になる。上からいくと、リゾットは24、俺は23、プロシュートが19、メローネとイルーゾォが17、でオメーがいて、ペッシが12だ」
「ん?メローネとイルーゾォってやつは、どっちも本妻の子なんだろ?」
「ああ、奴らは双子。まぁ驚くほど似てねーけど。金髪がメローネで、黒髪がイルーゾォだ。イルーゾォは他人に興味ねーから無害だが、メローネはなァ~~クセの強い奴だから、気をつけたほうがいいかもしんねぇな。ま、本妻の子供のくせに俺ら私生児ともつるむから、敵ってわけでもねーんだが」
いっぺんにいろんな情報が入ってきて、ギアッチョは頭をかかえた。いきなり自分に兄弟が6人も増えるってだけで、じゅうぶん混乱する。
今まで一人っ子で、母親と二人っきりでやってきた。そんな自分が、本妻の子やら愛人の子やら、おおぜい入り交じった中で暮らしていけるだろうか?侯爵の息子として?つーか俺が貴族?まずそこがぜんぜんしっくりこない。まぁ、こいつみたいな例もあるか…と、鼻歌まじりのホルマジオを見る。
「とにかくよォ、俺以外に兄弟が6人いて、3人が本妻の子、3人が愛人の子ってこったな?いちばん上がリゾットってやつで、こいつの言うことには逆らっちゃいけなくて、えーっとォ!?プロシュートとペッシって野郎は味方で?メローネってやつは敵でも味方でもねえ?」
「よくできました」
「あ~~~ややこしいッ!クソッ!もうこれ以上兄弟は増えねーんだろうなァァ~!?」
「混乱させて悪ぃが、じつはもう二人いた」
「あと二人!?もう覚える気にもなんねーが、一応聞いといてやるぜ!」
「素直だなぁおまえ。その調子ならリゾットとも仲良くやれるぜ。さっきリゾットが長兄っつったが、その上にソルベとジェラートってのがいたんだ。面倒なことに二人とも私生児だ。どう面倒かはなんとなく察しろよ。とにかく面倒なふたりは面倒なことを起こして消えた。あいつらのことがあったから、リゾットも俺ら私生児には厳しく対処するけど、奴らはもういないし、侯爵家の名前も継いでない、だからいまはリゾットが長兄」
「じゃあさっきの俺の理解で合ってるってことだな!?」
「そうだな。思考はシンプルなほうがいい。おめーは館でもうまくやってけそうだなァ~~正直ほっとしたぜ」
ギアッチョの大好きなアルファロメオは広大な平野を抜け森の中を突っ切る。風を飛ばし、ようやく緑が切れた先に、だだっ広い庭園と噴水、複雑な文様をえがく鉄の扉、そしてもっともっと先に鎮座する、白亜の城館。
正門とおぼしき門扉のまえで、車を降りたホルマジオは、あらためてギアッチョに向かい合った。
「ここが俺らの館だ。ようこそ!歓迎するぜ、兄弟」



「ペッシ」
声をかけた背中は、おおげさなほどビクッと震えた。それから素早くこっちに体ごと振り向いて、軍隊の敬礼でもしそうな勢いで姿勢を正した。まるで教師に見つかった生徒だ。
「あ、リゾット!いや、別に変なことしようってんじゃあなくて…」
「誰もそんなこと言ってねぇ。イルーゾォに用だったんだろ?」
「そ、そう!そう!本を借りてて、イルーゾォに…返そうと、おもって、それで…」
ペッシの両手には本が何冊か抱えられている。それでイルーゾォの部屋の前に立っていたのか。リゾットがペッシの姿を見つけたとき、ペッシが背をかがめてドアノブの鍵穴をのぞき込むというやたら怪しい行動をとっていたから、声をかけただけだが、ペッシはペッシで、リゾットに咎められると思ったらしい。顔にはおもいきり殴らないでくださいお願いしますと書いてある。
実際リゾットがペッシに手を上げたことは一度しかない。ペッシがこの館にやって来たばかりの時に、一度だけだ。それに比べ、プロシュートの方がよっぽどペッシを殴る蹴るのボッコボコにしているというのに、ペッシはプロシュートになついている。やはり同じ私生児同士のほうが、境遇が近いからなつきやすいんだろうか。
なんにせよペッシはリゾットを恐れている。ペッシ自身はそれほどリゾットから罰を受けたことがあるわけじゃないが、おそらくプロシュートの姿を見ているからだ。兄貴と慕うプロシュートがしょっちゅう懲罰房に放り込まれていたら、そりゃあ怖くもなるだろう。たとえそれがプロシュート自身の素行に問題があるからだとしても。
リゾットは姿勢を正したままのペッシをよけて、扉を二度ノックした。中から返事はない。
「イルーゾォはいないのか?」
「いると、思うんだけど…気配はあるんだ。でも、出てきれくれないみたい…」
「そうか。俺はいまから新しい弟を迎えにいく。イルーゾォに夕食の席には出ろと言っておいてくれ」
「あ、そうか!今日だったっけ!」
とたんにペッシは明るい顔をする。そう、今日やってくる『新しい弟』はまたもや私生児だ。どこぞの愛人との間にできた子。これで今いる兄弟じゃあ本妻の子より愛人との子の方が多くなる。
(いったい何人兄弟を作ってくれたんだ、親父…)
新しい弟はやはりプロシュートになつくだろうか。そうなるとなかなか厄介かもしれない。私生児同士が結託するとロクなことがないことを、リゾットは知っている。ソルベとジェラートの一件で嫌というほど思い知らされた。
だから私生児たちがつながりを深めるのを、つねに警戒している。これでもリゾットは兄弟たちを守ろうとしているのだった。リゾットなりのやり方で。兄弟の誰もが、そんなこと、微塵も感じちゃいないだろうが。
玄関に向かうため、庭に面した長い廊下を歩いていると、すぐそばの大きな窓の外、空から何かが降っているのが見えた。細かな粒子のようなそれは、一見汚れた雪のようだ。
バン!
勢いよく窓を開け放って、見上げると、屋上の手すりから身を乗り出すメローネと目が合った。その手に握られたガラスの器から降り注ぐのは、煙草の灰。メローネはリゾットを見下ろしマスク越しに目を細めた。そのとなりには、プロシュートの金髪が見える。それはとても不穏で、美しい光景だった。
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