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ソファと、それにまつわる人々 all


 リビングにはソファが3つある。6人掛けのL字型が1つ、1人掛けが2つ。ぎゅうっと詰めれば全員が座れるが、いい年した男たちが縮こまって肌を密着させぎゅうっと座るなんてありえない。それに彼らはギャングだ。

「あー……」
 ホルマジオはL字型ソファの片側いっぱいに体を伸ばして寝転んでいて、さっきから携帯電話をカチカチさせながらあーだのうーだのうなっている。ギアッチョがいれば3秒でキレるだろうが、今いるのはペッシだけだ。
 そのペッシは一人掛けのソファにきちんと座って、どこかで取ってきたフリーペーパーに見入っている。
「…よぉ、ペッシよぉ〜〜」
「……えっ!?なんだい、何か言った?ホルマジオ」
 ホルマジオは寝転がったまま、ペッシに向かって携帯を振った。
「どうしたらいいと思う?」
「えっなにが?」
「連絡がよぉ〜〜来ねーんだよなぁ、するってゆってたのによぉ」
「誰から?」
「昨日ナンパしたねーちゃん」
 唐突にペッシは顔を赤くして、急いで目線を手元の雑誌に戻した。それからもう一度、ちらっとソファに寝転ぶホルマジオを見る。
「街中でそんな、声かけた女の人と連絡とるなんてさ、ホルマジオ…よくねーんじゃねえのかい?」
「おいおいおいペッシよぉ!おめーはそれでもイタリア男かぁ?えぇ?」
 ホルマジオはがばりと上半身だけ起こして、ついでに灰の長くなった煙草をローテーブルの灰皿に押しつけた。
「女とのコミュニケーションは日々の潤いだぜ?街中でさっき知り合った女だって俺には等しく女だ、声かけてデートにお誘いするのが礼儀ってもんだろ」
「だってさぁ…俺たちギャングだぜ?」
「ギャングつったってひとりの男だろォーが。この世には『男』と『女』!その2種類しかいねえ、そうだろ?おめーはどっちだ?男か?女か?」
「そりゃあ男だ」
「だろ?じゃあイイ女のひとりやふたり、ナンパして落としてこい。なんだ、おめーの『兄貴』はそうゆう面倒はみてくれねーのか?」
 ホルマジオがニヤリと笑むと、ペッシは赤くなった顔を今度は青くして首が取れるんじゃないかと思うほどはげしく横に振った。
「そっ!そんなのっ!やめてくれよ、兄貴に殺されちまう」
「はぁぁぁ〜〜〜おめーなぁ…殺されちまうなんて情けねーこと言ってんなよぉ。たまには反撃してみろって、おめーの『ビーチボーイ』で」
「そんなことしたらマジでおいら死んじまうってェ!!」
「まーな……」
 本気で狼狽しているペッシを見ているとなんだか可哀相になってきて、ホルマジオは再びソファに寝転がった。携帯のメールボックスをチェックしても、新着メールはゼロ。思わずため息がでる。


「こないだ仕事の前に行った店あっただろ?カルパッチョのうまい店」
「駅前の?」
「そう。あそこにいた黒髪の女、店やめちゃったらしいんだよな。すげーイイかんじだったのに、俺らのことまるで『なによ、汚いブタ箱から這い出てきたみたいな顔しやがって』って目で見てきただろ?あれはよかったね。せっかく『ベイビィフェイス』の母親候補にいれてたのにさぁ」
「おまえの女の好みに俺が賛同するとでも思ったかよ」
 イルーゾォは立てた膝の上で思いっきり顔をしかめてメローネを見る。メローネはL字型ソファの端っこにだらりと上半身を預け、猫みたいにソファの上に体を横たえている。
 そのもう片側はホルマジオが占拠して仰向けで堂々と昼寝中。ソファから落ちたホルマジオの右手には携帯電話が握られている。イルーゾォがここに来た時からその体勢で寝ていた。一体この男はいつからここにいるのか。
 イルーゾォは借りてきた映画をみようとリビングにやってきて、一人掛けソファに立て膝して座りテレビ画面の方を向いていたわけだが、さっきからメローネがなんだかんだと話しかけてくるから、映画の内容がまったく頭に入ってこない。やっぱり鏡の中で見ればよかったと思うが、あんまり引きこもりすぎると鏡をベイビィフェイスに分解されるのでそれもよろしくない。
 テレビ画面に目を戻すと、さっき結ばれた男女がもう泣きわめいて喧嘩してる。展開早いな。
「その女優、あれだろ、ヤクのやり過ぎでトチ狂って無銭飲食したり万引きくりかえしてたやつ。いつのまに復帰してたんだ?」
「知らねー…ああもう、話しかけるなよ画面に集中できない。ちょっと黙ってて」
「ポーカーやろうぜ。おまえが勝ったら黙っててやる」
「俺は映画見てるんだよ!誰がやるか!」
 要するにメローネは暇でしかたないのだ。結果2人の攻防はキレたイルーゾォが鏡に引きこもるまで続く。


 ギアッチョが2階のフロアから降りてくると、リビングのソファでホルマジオが携帯をいじっていた。他は誰もいない。
「メローネの野郎見なかったか?」
「あー?さっき出てったぜ。キッチンじゃねぇかぁ〜?」
 ホルマジオは答えながら大きなあくびを漏らす。さっきまで寝てたからよぉ、という彼の口調がいつも以上に間延びしてるのは眠気のせいだろう。それでいて右手はカチカチと携帯電話を叩いている。忙しいことだ。
「また女かよ。昨日の晩も寝てねーとかゆうんじゃねえだろーな」
「フン、ホルマジオさんは案外モテモテなんだぜぇ?ひとり紹介してやろーか、ギアッチョ」
「ケッ金のかからねー奴ならな」
「女ってのぁ金のかかる生き物なんだよ、生まれた時からな」
 L字のソファの背に片腕をのせ、行儀悪く足を組んでホルマジオは得意げに鼻を鳴らす。さして興味もなく、ギアッチョは適当に片手を振った。
「あー猛烈に腹が減った。あの変態ヤローなんか作ってやがんねえかな」
「メローネがする料理なんてレンジでチンレベルだろォ〜」
「なんでもいいから飯が食いてぇ…」
「オイ、俺にそんな小羊のような目線を送るなよ。おごらねーぞォ」
「ケチくせぇなァァ〜〜女にばっか金使ってんじゃねーぞクソッ」
「おめーに使うよりは金も喜ぶぜ」
 ギアッチョがホルマジオにたかるのを諦めてキッチンに向かおうとした時、まさにそのキッチンのドアを開けてメローネが現れた。口のまわりにトマトソースがついている。
「その匂いは!ピザトースト食ってやがったなッ!?」
「Appunto(そのとーり)」
「まだ残ってるか!?」
「きれいさっぱり食いきったよ」
 ああ〜〜〜と悲哀に満ちた声をあげながら頭と空腹を抱え座り込んでしまったギアッチョを見下ろして、それからメローネはホルマジオの方を見た。
「なにこのかわいそうな子」
「キャットフードでも与えとけや」
 ようやく絶望からは立ち直ったらしいが空腹からは立ち直れてないギアッチョは、一人掛けのソファに斜めに座って斜めに腰をねじり斜めに首をかしげて、つまらない夜のクイズ番組を斜めに見ている。メローネはL字型のちょうど直角の部分に座り、組んで伸ばした足をローテーブルに乗せ、パソコンをいじっていた。ネットオークションで落としたいものがあるらしい。ホルマジオはL字の端に陣取ってやはり携帯電話をカチカチ鳴らしている。
 玄関につづく廊下側の扉が開く。プロシュートが入ってきた。うしろにはリゾットがいる。
「お」
「ホルマジオ、いいところにいた」
「なんだ?イイ女でもつかまえたか?それ以外の用件はお断りだぜ」
 ガバッと身を乗り出したホルマジオに、リゾットは肩をすくめてみせる。当然のようにそれ以外の用件らしい。
 さっさとリビングに入ってきたプロシュートは鍵の束とサイフとライターをソファの目の前のローテーブルに放り投げ(ガチャン!と騒々しい金属音が鳴った)、ひとまず紫煙を吐き出してから、煙草を挟んだ指をメローネとギアッチョ、それぞれに突きつける。
「とっとと散れ、おめーら。ちょっとオトナの話し合いだ」
「はァー!?今いいとこなんだよ、あのイケてないセーター着た俳優が500万の賞金を手にするかどうかっつう、重大な局面だぜ!」
「世界一どうだっていいねそんなもん。2秒数えるうちに出てけ。いいか、ウーノドゥーエはい遅ェッ!!!」
「うおおおッ!!??」
 瞬時にプロシュートの手から放たれた煙草はまるで弾丸のようなスピードでギアッチョの顔面を襲った。とっさにホワイトアルバムを発動させなければ完全に眉間に火傷だ。
「テメェェエエ早すぎだろうがッ!!数えんのもキレんのも煙草投げんのも早すぎだろうがクソがァァッ!!」
「うるせーな……」
「しかも冷めんのも早ェッ!!」
「あーあ、うっさいなぁもう、上あがってよ〜っと。リゾット、ピザ宅配するなら呼べよ」
「海鮮ピッツァでいいならな」
「エビ抜きでね」
 パソコンを閉じてメローネは早々と上のフロアへ上がってしまう。プロシュートが取り合わないのでギアッチョも渋々テレビを消して上へあがっていった。元からテレビなんぞ見ていなかったにちがいない。
 音のなくなったリビングを横切って、リゾットはL字ソファの片側に腰をおろした。深々と体をソファの背に沈ませる。お疲れのご様子だ。ホルマジオはニヤリと口の端をあげる。
「どうしたァ、またこってりしぼられたか、上の連中によぉ」
「まぁそんなところだ」
「あの老いぼれジジイどもがいるかぎりパッショーネは安泰だな。あいつら仙人かなんかじゃねぇか」
 プロシュートはローテーブルの前に立ったまま、新しい煙草を引き出してくわえる。火をつけてゆったり吸い込み、紫煙を吐き出す。煙が彼のスタンドのように体を取り巻く。
「資金面に関してなんだかんだ言われるのは慣れてるが、ああも堂々と俺らのチームの存在自体が目障りだと主張されると、反応に困る」
「はぁ〜しょおがねぇなぁ〜そりゃあ」
「よく言うぜ、てめー薄ら笑い浮かべてたぞあん時」
 ホルマジオもプロシュートから一本拝借して煙を吸い込む。プロシュートはローテーブルに腰をおろして足を組んだ。絶妙に3人ともが向かい合ってない。
「それで?このホルマジオさんに話ってぇのは?その仙人の中の誰かでも殺してこいってかぁ?」
「バカ言うな。俺の愚痴に付き合えって話だ」
「はっは、なんだそんなことかよ。俺は良心的だからよ、ビール一杯で付き合ってやるぜ?」
 ホルマジオはソファの上に立てた膝の上に手をのせ肩を揺らし笑う。その視線の先にいるリゾットもニヤッと笑みを返した。
 それからホルマジオの煙草をはさんだ指が、ローテーブルに座るプロシュートに向けられる。
「こいつはあんたの愚痴には付き合ってくれねぇのか?」
「さっき愚痴りかけたらケツ蹴り食らった」
「容赦ねぇなオイ」
「てめーの寝言なんざ聞きたくないね、マンモーニが」
「だそうだ」
 斜め上から見下す角度で煙を吐くプロシュートに、ホルマジオはやはり肩を揺らした。
「あ、兄貴ィ、リーダーも、帰ってたんですかい」
 2階フロアから降りてきたのはペッシだ。寝起きなのか、いつもはセットしてある髪がペたりと頼りなく崩れている。
「ペッシ、赤ワイン一本もってこい。トスカーナのやつ」
「俺はエスプレッソをたのむ」
「俺ビール。リゾットのおごりな」
「えええ…そんなにいっぺんに言われちゃあ覚えらんねぇですよ……ええっとぉ、トスカーナにビールに…赤のワイン…」
 指折りブツブツ唱えながらペッシはソファの後ろを横切ってキッチンへ消えていく。3人でそれをなんとなしに見送る。
「あの調子じゃあなんか忘れるか間違えるかするぜ」
「エスプレッソを忘れるのに賭ける」
「てめーがたのんだもん忘れるのに賭けんなよ、情けねえ」
 予想通りエスプレッソを忘れたペッシがプロシュートのローキックを食らう頃には、なんの匂いを嗅ぎつけてかメローネが降りてきて、ソファに敷かれたラグに座り込んでトスカーナワインを開けだした。いつのまにか鏡から出てきたイルーゾォも、ビール瓶片手に一人掛けソファに陣取っている。グラスが足りねぇツマミ買いにいけと騒がしくなってきた頃にはウルセェェエーーーーッという一番うるさい声とともにギアッチョも登場して、ラグに座り込みソファに肘ついて文句を垂れだした。プロシュートはもうひとつの一人掛けで足をぞんざいに組み、ペッシはローテーブルをのけてラグの上にグラスとツマミを広げる。ソファでなくても、全員分の居場所がここにはある。
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